14-5. クロマチンとエピゲノムの解析
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1) メチル化DNAの検出
メチル化DNAの分離・調整法
バイサルファイト変換(バイサルファイト法)
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メチル化解析の標準法の一つ
シトシンはバイサルファイト処理を経てウラシルに変換されるがメチルシトシン(mC)は変換されないという原理に基づく
塩基の違いをもとにmC領域を同定する
本来G-C対だったものが処理&DNA合成後にA-T対になる
mCを直接濃縮する方法
抗mC抗体を使ってDNA断片を免疫沈降法(MeDIP:methylated DNA immunoprecipitation)で回収する方法
ビオチンを付けたmC結合タンパク質のメチル化CpG結合ドメイン(MBD)をアビジンビーズで分離する方法
メチル化領域を切断できない制限酵素のHpa IIとできるMsp Iを用いる古典的方法もある
配列同定法
個別領域を同定する方法
メチル化特異的PCR(MSP)
バイサルファイト変換で調製した試料を特異的プライマーでPCRする
この他にもMassARRAY法など
断片化DNAを質量分析で分析して質量の比較から塩基を同定する
全メチル化部位(メチローム)を網羅的に解析する方法
マイクロアレイを使う方法
NGSを使う方法
バイサルファイト変換をもとにするWGBS(whole-genome bisulfite sequencing, e.g. MethylC-Seq法, PBAT法)や、MBD-Seq法, MeDIP-Seq法がある
制限酵素を用いた方法に基づく網羅的解析
HELP(Hpa II tiny fragment enrichment by ligation-mediated PCR)
NGSによる解析も可能
2) タンパク質結合の解析
個別部位における結合タンパク質の解析:ChIPアッセイ
原理
クロマチン中のDNAとヒストンや転写因子などのDNA結合タンパク質との間の相互作用をホルムアルデヒドなどの架橋剤で固定し、DNA-タンパク質複合体を抗体を使った免疫沈降法(IP)で回収する
架橋を外してからDNAを精製し、目的DNAの有無や量をPCR(ChIP-PC)や定量PCR(ChIP-qPCR)で検出する
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抗体を選べば修飾タンパク質(e.g. アセチル化ヒストン, リン酸化RNAポリメラーゼII)の解析もできる
免疫沈降複合体を別の抗体で再度免疫沈降させて複数のタンパク質結合を解析する方法もあるが、これはreChIPという
操作の概要(ホルムアルデヒドでの架橋)
1) 細胞をホルムアルデヒド処理した後、クロマチンを適当なサイズに切断する
ホルムアルデヒドはタンパク質中のLys, Arg, His残基と塩基(A or C)中のアミノ基の間を共有結合させる
PCRは通常百~数百bpの範囲を増幅するので、切断後の平均DNA長を数百bp程度にする
超音波処理か酵素(MNase)で切断する
2) タンパク質に対する抗体を結合させたビーズを加え、断片化したクロマチンをビーズとともに回収する
IPに使える抗体がない場合はタンパク質にタグを連結させ、タグに対する抗体を使用する
3) 架橋を外し、フェノール抽出でDNAを精製し、目的配列をはさむプライマーでPCRを行い、増幅DNAを検出する
結合部位の網羅的探索
タンパク質結合DNA配列の網羅的検索法に、ChIPで回収したDNA混合物を適当な方法で標識し、DNAチップ(タイリングチップを使用)にかけてDNAを同定するChIP-SeqあるいはChIP-on-chipという方法があるが、最近ではNGSを使うChIP-Seqが主流になりつつある
3) クロマチン高次構造の解析
クロマチン構造解析により、オープンクロマチン領域やクロマチンループ(タンパク質により遠距離にあるDNA領域がつながれる構造. 遠距離にある転写活性化因子が働くことができる機構と考えられ、集約された核内ドメイン構造とも関連する)などの解析ができる
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断片化クロマチンを用いる
DNase I
ヌクレオソーム状態の領域は切断しにくいが、転写因子などが結合しているオープンクロマチンは切断しやすい
そこでクロマチンを酵素処理後、DNAを精製し、PCRやサザンブロッティングで特定のクロマチン領域を解析する
網羅的に解析する場合はDNAを断片化後にビオチン付きアダプターを結合させ、断片を回収してNGSで解析する(DNase-Seq)
オープンクロマチン領域の境界部分が同定できる
黄色ブドウ球菌由来MNase
タンパク質感受性の高いヌクレアーゼで、ゆるんだクロマチンのDNAをヌクレオソーム単位で切断する
クロマチンを処理し、DNAをサザンブロッティングして目的クロマチン領域のヌクレオソーム状態を解析する古典的方法
NGSで網羅的に解析すること(MNase-Seq)もできる
3C法およびその関連法
3C法(chromosome conformation capture)
ゲノム上離れた2つの領域の物理的相互作用を定量的に解析する方法
DNA-タンパク質を架橋した後制限酵素で切断し、DNAリガーゼで本来離れている領域を連結して3Cライブラリーを作製し、定量PCRによって特定領域の解析を行う
3Cライブラリーをもとに相互作用するDNA領域を網羅的に検索する場合(e.g. 4C法、5C法、HiC法)はNGSを使う
HiC法ではライブラリーの断片にビオチンを付着させ、それをストレプトアビジンビーズで濃縮したものを解析用試料とする